故 幸宣佳先生との思い出…


バカと言われ続け…

幸 宣佳先生にお稽古をしていただいていた小学生の頃。

先生は、

「良い!」

「ダメ」

も言ってくださいません。

いただくお言葉は、

「バカ」

だけです。

ある日は、張り扇を持っていた先生の手が止まり、窓の方に歩いて行き、窓を開け、お庭を眺めてらっしゃいます。

ある時は、途中で席を立たれ、お相撲を観に行かれました。

その間、私はずっと構えの姿勢で待っていました。

その時は情けなかった…悲しかった…できない自分に対して…

ずっと、ずっと先生が戻ってこられるまでその姿勢で待っていました。

 

先生は、

「仏の目になれ」

と言われます。目玉が動くのは舞台上みっともない。

囃子方は目立ってはいけない。

目玉が動くと目障りである。

だから、目玉を邪魔にならないようにしないといけないので、半分つぶって、仏のような目でいなさいと。

 

先生が戻ってこられるまで取っていた構えの姿勢は、今の私の礎です。


<HP読者からの質問>どうして構えたままでいたのですか?

構えないで待つということが考えられませんでした。

その他の選択肢が当時の私にはありませんでした。

兎に角、先生がまた私の前に戻ってきてくださるまで待ってないといけないって当たり前のように思っておりました。

でもこれが今の私が舞台への姿勢に大きく役立っていると思います。