幸 宣佳(こう のぶよし)先生は毎晩、晩酌をなさる。
普段は口数の少ない先生だけどお酒が入ると色々話してくださる。
舞台のこと、鼓のこと…この時間に聞いたお話しは今の自分の舞台に大いに役立っている。
晩酌の時だけが、鼓についてお言葉をいただける。
だから、幸先生が晩酌をされて、隣で座ってお話しを伺う。
この時間が自分にとってはとても大切な時間であった。
でも遅くなってくると、奥様が、
「清ちゃん、電車がなくなるよ。明日、学校でしょう!」
と言われて…当時の僕は小学生だった。
先生は、必ず一升瓶に少しだけお酒を残して晩酌を終えられる。
でも朝になると残っていたお酒がなくなっている。
毎晩、きちんと瓶を空にされた。
お酒がないと、息子さん(幸正悟先生)夫婦のところにお酒をもらいに行く。
親子とはいえ、師匠と弟子の関係。
息子さんは先生に敬語を使っていたなぁ。
構えないで待つということが考えられませんでした。
その他の選択肢が当時の私にはありませんでした。
兎に角、先生がまた私の前に戻ってきてくださるまで待ってないといけないって当たり前のように思っておりました。
でもこれが今の私が舞台への姿勢に大きく役立っていると思います。