故 幸 宣佳先生との思い出…。


不甲斐ない私

幸先生とのお稽古。

突然、先生がどこかに行ってしまわれます。

なぜ、席を立たれたのか分からない。

そんな時がものすごく自分に対して不甲斐ない思いをします。

どこが悪かったのか。

何をしてしまったのか。

何をしなかったのか。

そんなことをグルグル頭の中で考えるのですが、分かりません。

どんなに考えても分からない。

ジッと先生がお戻りになるまで、席を立たずに待ちます。

時には数時間後、先生が戻ってらっしゃいます。

そして、先生は窓を開けて庭を見て、深いため息をつき、私の方を見て…

私の顔をじーっと見て、

「バカ」

と一言。

そしてお稽古が始まります。

何をして、あるいはしなくて、「バカ」って言われたのかは、さっぱり分かりません。

分かっていることは、先生が深いため息をつかなくてはならない事を私がしたという事。

そして、私が「バカ」と言わせてしまったという事です。

私の頭の中では、

「あ〜〜〜、私は出来てないんだ」

という事は、しっかりと理解していました。

しかし、鼓を止めるという選択肢は、私の中にはありませんでした。