幸先生とは鼓を通した学びだけではなく、いろいろな生活を通しても学ばせていただきました。

先生とは釣りに行ったり、山菜採りにご一緒したりしました。

幸先生の所に出入りをしていた宮大工さんも私に釣りや山菜採りを教えてくださいました。


夜、寝ていると雨戸を叩く音がすると宮大工さんが外にいて、夜釣りなどに連れて行ってくださいました。

そして帰ってきて、先生を起こして、釣ってきた獲物を料理して食しました。

後日、先生は宮大工さんの秘密の釣り場を教えろと言ってきました。

宮大工さんには、幸先生には絶対に教えるなと言われていました。

だから、

「知りません」

「分かりません」

と答え続けると、幸先生は、

「教えないのなら、出て行け!」

とまでおっしゃります。仕方なしにお教えすると、大喜び。

そして二人でその秘密の釣り場へ釣りに行くのです。


自分の労力で釣った魚や採った山菜などは、とても美味しいものでした。

季節の食べ物を楽しむこと。

自分で採った魚や山菜を楽しむこと。

幸先生は、楽しむときは徹底的に楽しむ方でした。

このようなこと、ひとつひとつが今の私の芸につながっていると思います。